バオー来訪者の話

甥っ子がジョジョを読むようになった。
好きなスタンドは、スティッキーフィンガーズだそうです。
年取るはずですね。
今日はジョジョじゃなくて前作のバオーの話。
少年ジャンプ
ジャンプを毎週買う子では、なかったのですが、友達の家に必ずころがってたので大体読んでましたね。あと、お好み焼き屋にも必ず置いてあった。
僕の世代は、キン肉マン、Drスランプ、コブラ、ウイングマン、北斗の拳、とかですね。
キン肉マンの連載予告がある号を見た覚えがあります。”大丈夫かなこの漫画?“って思いました。(大丈夫どころか今も連載しています!)
キン肉マンは、みんな夢中になってましたね。自分は冷静なフリしてこっそり読んでました。悪魔将軍とキン肉マンゼブラが好きです。
Drスランプが1番好きでした。コミックスも全巻持ってました。クリスマスプレゼントに巨大なアラレの塩ビフィギュア買ってもらいました。(1巻の表紙のやつ)
ジャンプの黄金時代に満を持してあらわらたのが荒木飛呂彦先生でした。
バオー来訪者
2巻で完結するこの物語。人気もあったようなので打ち切りとかではなく当初から決まってたのかな?
この頃の荒木先生の絵は、横山光輝先生の影響がみられます。ジョジョの承太郎は、バビル2世とクリントイーストウッドから相を得たとインタビューで仰ってます。
2巻で完結ですが、ちょうどいい。
バオーというのは、秘密結社ドレスの開発した生物兵器。動物の脳に寄生する、小さなヒルのような生物。
寄生された動物は、自身の生命に危険が及んだ場合に武装化現象とよばれる能力を発現し、”変身”します。
精密に描かれたバオーの顔が、衝撃でした。皮膚が硬質化し、ボロボロ剥がれ、その奥から目がみえる。
ジョジョのスタープラチナやチャリオッツ、そしてこのバオーの無尊な面構えは、やはり横山光輝作品に登場する人造人間や、ジャイアントロボを想起させます。

ストーリー
ストーリーは、組織によってバオーの能力を得た主人公 橋沢育朗と予知能力のある少女スミレの逃走劇。
バオーの武装化現象がナレーションによって説明されます。
メルテッディンパルム、シューティングビースススティンガー、リスキニハーデンセイバー、皮膚や髪の毛が硬質化し、武器化します。どこか、病的でグロテスクなのに目が離せない。
武装化現象下では、宿主の意志はフリーズされ、敵対するものの殲滅にのみ行動は限定されます。
殺意を額の触覚からニオイとして感知(バオーにとって嫌なニオイ)。その発生源を根絶するまで武装化現象は続きます。
無表情なバオーが殺戮する理由は、シンプルな防衛本能からで、開発したドレスもコントロールできないのは、皮肉なことでもあるし、警告でもあります。
スミレがつれている謎の動物ノッツォ。ドレスの開発した新生物。これにも細かい注釈が書かれています。
SFとしてのバオー
ジョリオンの岩人間の解説も荒木先生が乗って書いてる感じがします。

この手法は、SFやファンタジーでよく用いられ、”指輪物語”は、冒頭からホビットの生態、”パイプ草”の解説に多くのページが割かれます。
作者の頭の中に世界観が完全に構築されている場合、この手法は物語の形成に良い効果を付与します。
マッドマックスの話で言及した、ロケ地がオーストラリアの砂漠で云々の話。
こちらは、ロケーションで世界観を補完しています。
荒木先生は、バオーの生態やドレスの思想を、丁寧に描かれた絵と解説でフォーカスし、舞台(ロケーション)は、故郷の東北の風景を選ぶことでリアリティを出すことに成功しています。
(切り立った断崖は、関西以南の太平洋側に住む人間には、あまり馴染みがない。)
特殊な能力をもつヒーローは、誰でも創造することができます。
ただそれをリアリティをもった実像として成り立たせるには、俯瞰から見た世界の構築が重要になります。
ジョジョリオンでは、杜王町の地図や風土、歴史が丁寧に描かれます。その舞台装置の中で動き回る主人公たちは、躍動感あふれ、架空の町が実在するかのように物語に没頭させる仕掛けとして機能していくのです。
荒木先生、そのへんはバオーの頃からブレてないですね。もちろん世界観の構築を放棄する描き方もあり、それも魅力があります。
高橋源一郎先生の小説
“さようならギャングたち“なんかがそう。
これは、読書の”読む”行為自体がギミックとなる…
う~ん、うまく説明できない。
興味のある人は、読んでみて。
“中島みゆきソングブック”で笑える人は好きなはずです。
おっと、バオー来訪者の話でした。
ヒーローとしてのバオー
バオーは、仮面ライダーやデビルマンの正当な末裔です。異形のヒーロー、日本のアニメやマンガでは、多いですね。
西洋人、特にアメリカ人は自分たちのフィジカルに絶大な自身を持っているので、タイツを履くだけでヒーローになれます。
対して体躯で劣る東洋人がヒーローたるには、外的要因が不可欠で、秘密結社に改造されたり、正義の宇宙人と融合したり、祖父が残したロボットに乗ったりと、後から力が付与されます。
本人の意志に関係なく、力を与えられるので正義か悪かという立ち位置は、危ういものになり本人の資質によるところが大きくなります。
“神にも悪魔にもなれるのじゃ“
仮面ライダーもデビルマンも悪の組織からドロップアウトします。
バオーも育朗がコントロールするまでは、アンチェインな猛獣そのもので、正義ではありません。
宿主の特性を生かした攻撃をするバオー。人間に寄生したバオーの情報がないドレスの兵士は、高速で飛ばされてくる石つぶてに驚愕します。
人間の道具を使うという知性をも取り込んだ殺人兵器。それをコントロールできない育朗は恐怖します。
物語中盤、育朗は、バオーの能力を理不尽な暴力に対抗するために自分の意志で操れないかと切望しついに手に入れます。
日本人特有の感性で、武士道や禅の思想があります。これらは、乱暴な解釈ですが、メンタルがフィジカルを凌駕するとゆう考え方です。
育朗の精神がバオーの能力を統制下におくのは、フィジカルを凌駕した瞬間であり、ダークサイドがライトサイドに裏返る起点となります。

日本では、力と精神のコントロールバランスがヒーローを生むようです。
魔神ウォーケン
ネイティブ・アメリカンの超能力者。分子を振動させる能力を持ちます。
ラスボスがネイティブ・アメリカンなのが面白いですね。人工的に作られたバオーに対して、大地や自然を連想させます。
自身の能力をコントロールすることが出来ず、普段は、ヘッドフォン型のリミッターを装着して力を抑制しています。
一見人格者に見えたウォーケンですが、ヘッドフォンが取れ、暴走し育朗とは逆に破滅の道を進んでいきます。
この対比は、意図されたものかわかりませんが、テンポのいい展開に弾みをつけていると思います。
バオーを開発した霞目博士は、崩壊していく基地の中、狂言回しの役割を担います。
死の間際、自ら創造した生命に賞賛にもとれる調子で読書に語りかけます。
稼働に大電力を必要とするレーザー砲を自ら発電し、撃ち放つバオー(育朗)
ウォーケンを倒した後、鍾乳洞の崩壊に巻き込まれ海中深く沈んでいきます。
バオーの続編はないと荒木先生は断言されてます。
みなさんは、どのように補完されてますか?

仮死状態から目覚めスミレと幸せに暮らす?
バオーの卵が孵化し、世界中に蔓延する?そうかもしれないし、そうでないかもしれない…
まとめ
好きなスタンドは、重チーのハーベスト。
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