ビルバインのこと

ビルバインのこと

バイストンウェルの物語を覚えているものは幸せである。

覚えてない人も そもそも知らない人も或いは幸せである。

ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう。

ビルバイン

アニメ聖戦士ダンバインに登場する主役メカ。若い人もゲームのロボット大戦でご存知の方も多いと思います。

ヒロイックなデザインと可変機構で大人気のロボット(オレ調べ)。僕と同世代の人は共感していただけると思う。

何で好きなのか?それはカッコいいから。ただしオーラバトラーのデザインの観点から見た場合はあまりよろしいとは言えない。 

この辺の矛盾はみなさんわかってらっしゃると思います。スポンサーのテコ入れや生みの親(監督)から嫌われていたりと不遇な生い立ちですが80sに子供だった僕たちを舐めてもらってはこまる。

大人の事情は百も承知。それでもビルバインはカッコいいんです!

オーラバトラー 

オーラバトラーのデザインは最初 宮武一貴さんでオーラバトラーの基本フォーマットが完成します。

曲面主体で構成されモノコック構造(のはず)。昆虫モチーフのデザインで透明な翅を持ち(×4)、オーラコンバーターと呼ばれる飛行のための巨大な噴射装置が背中に。

昆虫モチーフのデザインは当時アニメージュで連載中のナウシカの影響。

オーラバトラーの外骨格はバイストンウェルに生息する”恐獣”と呼ばれる生物の外骨格がそのまま(ある程度加工?)使われています。

当時の監督へのインタビューでオーラバトラーの表面のテクスチャーについての言及があった(ような気がする)。

たしか動物の鞣し革様なものだと仰られていたような?

この発言からかどうかはわからないけどガレージキットやモデラーのフルスクラッチでは生物的な表現のものが増えていきました。

この流れは竹谷隆之や韮沢靖の造形作家と相互に影響しあって有機物と無機物の融合したクリーチャーやメカが1ジャンルを築きます。

オーラバトラーのデザインがそっちよりに傾いていったのはそれだけナウシカの影響が大きかったとゆうことですが宮武先生が当初描いていたイメージからはすこし離れていった気もします。

ビルバインの系譜

当時多忙の宮武先生からバトンタッチしたのが出渕裕先生。オーラバトラーのイメージを決定づけます。

オーラバトラ=怪獣。雑に言えばこんな感じ。中世ファンタジーのドラゴンのイメージも重なります。

宮武先生の残したイメージ画稿からクリンナップされたものやオリジナルのものもありますが所謂”ブチメカ”といえばオーラバトラーのイメージがあります。

ビルバインの系譜で語るとオーラバトラーの祖たるゲドが挙げられます。

ダンバインから逆算された旧式のイメージでブラウンのカラーからジブリメカっぽい印象もうけます。 

メカニックと人との付き合い方が全長7メートル程度のオーラバトラーでは緻密に描くことができます。

富野監督が宮崎駿監督をライバル視してたのは間違いないですがナウシカより先にハイファンタジーの映像化に慢心(御本人は趣味に偏りすぎたと仰ってます)があったとし物語中盤地上編に大きく舵を切ります。

ゲドのデザインもローテクな中世ファンタジー世界での乗り物としての役割を担い監督の思い描く理想も反映されていましたが趣味に偏ったというのはそうゆうことだったのかも。

出渕先生は後に雑誌の連載で出渕版オーラバトラーの世界を描いていくことになります。

ビルバインの系譜2

ビルバインのデザイナーは湖川友謙先生。ビルバインで目を惹くのはそのガッシリとした体躯にあります。

曲面を強調しアウトラインのなだらかな緩急がオーラバトラーの魅力ですがビルバインにはそれがほとんどありません。(寸胴?)

スポンサー側のオファーは変形と堅牢さをクリアしかつオーラバトラーにみせるデザイン。

監督は『もっと早く言ってくれれば美しいビルバインを用意できたのに』と悔やんでいます。

これは物を作る人の責任感から出るプロとしての発言だと思いますがたしかにビルバインはオーラバトラーとしてクソダサいです。

ただ工業製品として優れていて(プレイバリューとデザインが両立している点)美しいと思う。

個人的にはトミーのDXビルバインが正解でありビルバインそのものだと思う。(バンダイの1/48も良いキットです)

ビルバインの系譜は先述の出渕版オーラバトラー”ヴェルビン”として生まれ変わります。

B CLUBの連載 オーラファンタズムで画稿が発表されました。当時はガレージキットメーカー百花繚乱の時代でそれを意識したデザインであるとも言えます。

ヴェルビンは”ブチメカ”の傑作のひとつです。カラーは夜間迷彩に引っ張られた青っぽいグリーン。夜間迷彩はTVシリーズ48話からビルバインに施されたカラースキムで当時ガキだった僕らはネイビー(ブルー)って呼んでた。 

改めて当時の画像を確認してみるとグリーン寄りの色なんですね。多分ショウのヘルメットと同じ色。

夜間迷彩もファンの間で語り草。ゲームでは隠しアイテムになってるんだっけ?

ビルバインの最後(これぞ僥倖)

地上編とオールオブデスのラストは賛否が分かれると思いますが冒頭のナレーションからバッドエンドの予感はありました。

ショウ駆るビルバインは宿敵バーン・バニングスのオーラファイター”ガラバ”と相討ちに。

ショウとの私闘こそが僥倖(ぎょうこう)とし個人の物語にフォーカスされます。バーンは物語を通して繰り返しショウに敗北し復讐に燃える男として動機付けされます。

監督は物語のキャラクターを通して自分の思いを語らせることがあります。

バーンに僥倖とまで言わせたものはなんだったんでしょうか。

これは僕のお節介な邪推ですが同業者(宮崎駿)の才能への嫉妬があったのかも。

ナウシカの連載はスポンサーの制約もなく自由(だったはず)。オモチャじゃない本物のメカニック描写やSFのビジュアルとしての面白さ。(皮肉にも当時の宮崎監督のアニメの仕事が減ってたのはGの成功にもあります)

ハイファンタジーの映像化が金の鉱脈であることに富野監督は早くに気づいていたと思います。しかし地上編で舞台を近代社会に移しSFロボット物に。最後はイノセントな主人公を殺してしまう。

ショウはナウシカほど無邪気ではないですが”良きこと”のメタファー。ファンタジーにしなかったのは意地なんでしょうね。それこそが僥倖ってことか。

バーンは可哀想な男だったけどペンタゴナワールドにギャブレーとして転生したと勝手に妄想。

ビルバインは大人の都合で生まれたクソダサいロボットですが監督の演出のおかげで僕たちのヒーローになりました。

まとめ

聖戦士ダンバインの放送終了からすぐのタイミングで風の谷のナウシカは公開されます。