ブリットポップのはなし

ブリットポップとその系譜に纏わるアメリカの音楽についての雑記。
スタイルカウンシル(以下スタカン)
ブリットポップは90年代の頃のブーム。猫も杓子もブリットポップでしたがその前夜みたいな雰囲気の頃もおもしろかった。
パンク ニューウェーブ テクノ 色々あったけどやってることは大体同じ。ただヘアースタイルが変わっただけ。
スタイルカウンシルはポール・ウェラーとミック・タルボットのバンド。実はジャムより先にこっちを聴いてます。
ポール・ウェラー兄貴を追っかけていくとだいたいUKの音楽シーンの移り変わりがわかります。
ジャムがまずビートルズやスモールフェイセスの影響が大きいのであれなんですがパンクやニューウェーブのバンドがレゲエやヒップホップに接近していくことはよくありました。
スタカンはジャズやラップなんかも取り入れて当時の若者のファッションのアイコンにもなりました。
サマーセーターとかこの頃流行りだした。あれ肩幅のある人が着ないと兄のおさがりみたいになりがち。
“Shout To The Top”は1番売れたのかな。ミック・タルボットのピアノで始まるこの曲。カッコいい。そしてオシャレ。
ストリングスのパートと疾走感のあるベースラインが最高に気持ちいい。
このキラキラした感じってアメリカ人じゃ出せない気がします。たとえば”スパンキー・ウィルソン”みたいな女性ソウルシンガーがこの曲歌ったらちょっとしつこくなる。
スノッブのなんたるかもわかってない自分でしたが先入観なしで聴けたのは良かったかも。(部屋にポスターも貼ってた)
イギリス人の本質
イギリスはブルースやソウルが外国の音楽として輸入されそれらを咀嚼、独自の解釈でアウトプット。
クリームの頃を聞かれたクラプトンのインタビューでこんなのがあった。
僕らはジャズをやってるつもりだった
リップサービスもありますがなるほどと思いました。外国の音楽を自分達なりの方法で再構築してると解釈しました。
アメリカとは言葉の壁もないので変換がスムーズなのも都合が良かった。スタカンの話にもどすと80年代の時代背景からラップの台頭とシンセサイザーや電子ドラムの普及でバンドアンサンブル自体はポップに。
ただイギリス人の根っこの部分だけはしっかり残っている。そういったものがUKロックなのかなと思ったりします。
イギリス人の根っこ。それはイギリスが寒い国ってことです。
The Cost of Loving
スタカン3枚目のアルバム。スタカンの中でこのアルバムが1番好きですがファンの間では評判悪い。
アーバンな雰囲気で大人っぽい曲が多い。
ギターはパーカッシヴなカッティングでジャムの後期からの流れも感じさせます。プリンスの影響もあったかも。
ニューヨークは今も昔もカッコいい都会です。そんな憧れや嫉妬ってイギリス人にはあるんでしょうか?
スティングなんかは開き直ってイングリッシュマンインニューヨークと歌ったのかも。
服装や訛りですぐばれちゃうんだよきっと。
スタカンは当時最新の音楽だったラップとミック・タルボットのジャズメソッドのピアノでアメリカリスペクトのオシャレなバンドでした。
余談ですが昔住んでた近所にスタイルカウンシルを店名に掲げている理髪店がありました。まあそのまんまなんだけど、入ったら有無を言わせず刈り上げノーチャリにされると妄想して1人ほくそ笑んでいたのを思い出しました。
ブラーVSオアシス
ブラーとオアシスが仲が悪くて当時盛り上がったって前書いたと思いますが音楽シーンではよくある話。
両バンドともビートルズをルーツに持つサウンドですがそれぞれ個性があります。
オアシスは当時のロッキンオンの煽りが的を得てた。こんな感じ。
秘孔を突かれたハイパージョニー・ロットンがビートルズをやってる。
ストーンローゼズやThe Smithの影響も公言されてました。パンキッシュな面もあるオアシスですが鼻に安全ピンじゃなくてバギースタイルなファッションも自分にはあってた。
パーカーは男の身だしなみとリアムも言ってます。
かたやブラー、ラディカルでポップなサウンドがイギリス人っぽいなあと感じます。
パンク ニューウェーブでグルーヴ感を否定、スタジアムロックのカウンターでもあったので既存の価値観を否定する動きとヒップホップカルチャーの影響。
ガールズアンドボーイズを聴いてみるとXTCの流れも感じさせてUKのロックシーンにおいてのパンクムーヴメントとその衰退の余波みたいなのが20年周期ぐらいで繰り返してるのがわかる。
最近だとフランツフェルディナンドあたりがそうかも。
スモールフェイセス
スモールフェイセスいいよね。スティーブ・マリオットのボーカルが最高にカッコいい。
ブルースをルーツに持つサウンドとモッズファッション。白人がやってるブルースはブルーアイドソウルなんて呼ばれていました。
スティーブ・マリオットやスペンサーデイビスグループのスティーブ・ウィンウッドのボーカルは才能そのもの。
“All or nothing”のモノクロのPVが観れるんだけど涙を禁じ得ない。寒い日の収録か吐く息が白い。あどけなさの残る若者がバキバキのブルースをやるなんて。
キーボードセクションがあるのもなんかイギリスっぽい感じがしますね。これは邪推なんだけど先述のクラプトンのインタビューにもあるようにジャズのアンサンブルをお手本にしていたからではないでしょうか?
ホーンセクションは比較的難易度が高いから敬遠されたのかな?
モッズのライフスタイルから好んで聴かれていたジャズやブルース。ビートルズがデビューの際革ジャンからモッズスーツに変えたのは有名な話。
スタイリッシュであることが第一でビシッときめてジャズバーなんかに通ってたモッズ達。リアムのパーカー好きも90年代モッズの正装だったとか言ったら大袈裟だけど半分ほんと。
Make Her Mine
Levi’sのコマーシャルで使われてたのでご存知の方も多いと思います。Hipstar imageの曲。ブラスの”くねる”感じがジャジーでカッコいい。
時系列はわからないけどジャズの名曲TAKE5やスージーQの影響がありそうです。
ユニゾンの気だるいボーカルであの娘をものにするぜと歌っています。
ブリットポップの起源のようなこの曲。発表から時間が経ってから好事家の目にとまりくしくも90年代にチャートインしたとか。(バンド自体はすでに解散)
モッズは若者のライフスタイル。ジャズやブルースは当時の最先端でそのマナーは現代も続いていきます。
ジャジーでかっこいい!
アメリカ人の本質
ブリットポップを語る上アメリカンポップも語らねばならないでしょう。
アメリカはまず国が広い。そしてほぼ砂漠、陽気なお国柄のイメージもありますが闇も深い。
ロックバンドがあんまりスタイリッシュじゃないのはイギリスに比べると温暖な地域が多いからでしょうか?
ツェッペリンはブルースマナーのバンドでしたがモッズではなくヒッピー。このスタイルが逆輸入でアメリカに入ってくる。
ヴァンヘイレンなんかきっちゃないんだけどなんかカッコいいんですよね。ヘビーメタルの文脈で語られがちですがポップです。
エディの愛機フランケンシュタインも無骨な見た目とは裏腹にかなり高度に構築されたギターだったと言われています。
レイジアゲインストザマシーンもアメリカを代表するバンドだと思うんですがこのバンドもきっちゃない。
トム・モレロは胸毛モジャモジャのゴリマッチョ。ハーバード大学卒。
ラップロックってちょっと苦手なんですがレイジとビースティは好きです。
短パンにネルシャツのきっちゃないオッチャンたちがメチャクチャカッコいいロックやってます。
“Killing in The Name”はライブで最高に盛り上がるナンバー。ボーカルのザック・デラロッチャも最高のフロントマンです。漫画BECKの千葉のモデルですね。
スタイリッシュじゃない反面血を吐くようなメッセージソング。ボーカルがヒスパニック系なのもこのバンドが本気なのがわかる。
アメリカのラップロックのギターはパーカッシヴでリズムセクションの役割が多く占めてるのも特徴です。
ラップロックに限っていえば怒りが原動力にあってパンクと融合して新しい表現として確立されていったのでしょう。
それだけアメリカのもつ闇が底なしでいまだに出口が見つからない。どの国も同じことが言えますか。
イギリスのロックがブルースやジャズへのリスペクトだったのに対してアメリカのヒップホップがパンクに接近していったのはお互い影響しあっているってことなんですね。(パンクの起源がどこかは別の話として)
ナゲット割って父ちゃん!
まとめ
イギリスのロックもアメリカのロックもカッコいいってことでした。
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