シン・仮面ライダーを見た。

男の子に訪れるライダー期、(訪れない人もいます)あなたの推しのライダーは?
リメイクや漫画原作の実写化はロクなことにならない。あれとかこれとか名前は出さないけど。
個人的には庵野監督のシン・シリーズは好きで毎回楽しみにしています。今回のシン・仮面ライダーは石ノ森章太郎リスペクトと庵野監督自らのシン・シリーズに対しての在り方がわかったような気がしました。
今作品の感想と僕個人の仮面ライダーへの思いを語る。
シン・仮面ライダー
今作はテレビシリーズと原作のリスペクトに溢れる作品でした。石ノ森キャラクターのスターシステムとシン・シリーズの常連俳優陣によるキャスティングが過去と現在を繋ぐメタバース(この言葉もちょっと飽きてきたね)として機能しています。
スパイダーマン ノーウェイホームがメタバース物として最高傑作です。これはサム・ライミ版とアメージングスパイダーマン、そしてアベンジャーズの並行世界が交差するいわばスパイダーマン祭り。
トビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールド、トム・ホランドの共演。(ちなみにアンドリュー・ガーフィールド主演のアンダー・ザ・シルバーレイクは最高のホラーDEATH!)
シン・シリーズはスパイダーマン祭りとは逆の作り方になっています。エヴァ、ゴジラ、ウルトラマン、この度の仮面ライダーの世界線が同一線上あるいはすでに複数ある世界線の交差した宇宙であるとの考察がネット上で語られています。(いや、間違いなくそうでしょう)
これはクロニクル世代の世界の見え方と捉えることもできます。つまり個人的な宇宙観。シン・の世界は庵野監督の個人的な宇宙で油断して入るとあれえっ?てなります。
もう一つのこの映画の仕掛けは石ノ森章太郎作品のメタバースにもなっている点です。
オマージュ
注意ネタバレがあります。
オマージュでわかる範囲ではキカイダーからのロボット刑事K、チョウオーグはイナズマン。
クモオーグ戦はテレビシリーズの第一話そのまま。本郷猛が変身すると顔に手術痕が浮き上がるのは原作リスペクト。
変身シーンもテレビシリーズの再現で(当初1号ライダーは変身ポーズがなかった)サイクロンの変形もしっかり描かれていました。
ラストで1号が消滅し意識?だけヘルメットに宿るのは原作リスペクトでしたね。池松壮亮の本郷猛は良かった。BSでやってた金田一耕助役もダークヒーローなイメージでカッコよかったです。(共演の栗原類も独自の存在感がありました)
ここからは僕の邪推です。チョウオーグが玉座に座ってる姿は弥勒菩薩のビジュアルも重ねています。
弥勒菩薩は遠い未来(56億7千万年後)世界に救済をもたらすという菩薩でチョウオーグ イチローの思惑と一致しています。
自ら仮面ライダー第0号と名乗るイチロー。善悪の基準があいまいになるシーン。(2対1で戦力的にも不利な立場)
玉座から伸びるデータケーブル。チョウオーグのデザインから山口貴由の漫画 覚悟のススメのキャラクター葉隠散 纏う強化外骨格”霞”を連想させます。
Wライダーを掌底からの波動?で吹き飛ばす動きは散のエクセレント(得意技)螺旋。蝶のイメージもあるし演者の森山未來さんからのアイデアもあったのかもしれません。(ベルトのダブルタイフーンはV3。庵野版のライダーの系譜を予感させます)
山口貴由先生も特撮ファンで近作”劇光仮面”を描かれています。庵野監督と接点があったかわかりませんが覚悟のススメの存在はご存知だったのではないでしょうか?

緑川ルリ子
浜辺美波演じる緑川ルリ子。この度のリメイクで1号ライダーと赤いレザーコートの美女のツーショットが映画上映に先んじて公開されました。
キーパーソンでもあり映画の魅力の半分(それ以上?)が彼女のルックスではないでしょうか。
緑川博士の遺伝情報から作られた生きた電算機と劇中語られます。これはエヴァの綾波の系譜で恋愛弱者の妄想する理想の恋人像。(庵野監督が恋愛弱者という意味ではありません)
理想といっても従順ということではなく所謂ツンデレでシン・エヴァの綾波やアスカの男を困らせるような言動はプログラムされたもの。
これは生みの親でもある監督の自嘲でもあるし今回の緑川ルリ子や西野七瀬演じるハチオーグは最新の人造美少女といえるでしょう。
正義の印の赤いマフラーがルリ子から贈られています。やっぱりここでもワンコくんなんですね。
彼女たちの演技はアニメ的で違和感を感じる方も多いと思いますが実写映画をやるにあたって庵野監督はリアルを求めていない。
アニメーションと同様にカリカチュアライズされこのへんのチューニングができないとシン・シリーズはきついと思います。(そう考えるとシン・ゴジラの石原さとみの変な英語も納得できるよね。あれ?)

シン・キカイダー?
竹谷隆之や韮沢靖がやっていた昭和特撮ヒーローのリメイク。
アレンジがキモいと苦手な人もいると聞きますが僕は好きでした。石ノ森キャラクターのスターシステムはS・I・C(スーパーイマジネーション超合金の略)ですでにやっています。
シン・仮面ライダーでは同じ石ノ森作品のキカイダーのキャラクターが登場します。S・I・Cの”キカイダーダブルオー”では仮面ライダーの世界線とキカイダーの世界線が交差する宇宙を描いています。
チョウオーグ、イチローと傍観者であったKの関係性はキカイダーでのジローとイチローのネガと見ると面白い。
イチローはゼロワンと超人類イナズマンのメタでルリ子はさしずめビジンダーといったところでしょうか。
人間たちの争いを見守るだけのKはシンメトリーのパーフェクトキカイダー。
イチローやルリ子のデーターが残された1号のヘルメットがキカイダー正史の世界線に渡り01やビジンダーにインストールされたのでは………?このへんにしときましょう。
レザースーツのヒーロー(怪人)たち。
シン・仮面ライダーの怪人のデザインはレザーに身を包みマスクで顔を隠したサイコ。ジッパーもデザインのフックになっていてカッコよかった。
2000年代初頭にあったフィギュアブーム。
スポーンやXーMEN。日本ではデビルマンや仮面ライダーのフィギュアがたくさん作られました。
韮沢靖先生のファントムコアを紐解く至福の時間(設定資料集やムックを眺めてる時が一番幸せ)。韮沢怪人はパンクやホラー映画の影響が大きくレザーファッションもデザインに取り入れています。
シン・仮面ライダーのデザインはオリジナルの尊重(引きの絵だと旧デザインそのまま)とレザーの質感、平成ライダーのメカニカルなディテールの追加。
韮沢靖や竹谷隆之の影響と一度あったオリジナルのリメイク”仮面ライダーTHE FIRST”のオリジナルデザインの再構築がシン・ではさらに洗練されています。(怪人のデザインはやっぱり出渕先生)
1号の意思を引き継ぎ新調されアイスブルーに塗られたヘルメットを被る一文字。新1号 2号のカラースキムもカッコいい。
サイクロンのデザインは最初見た時うへぇってなったけど偽ライダーとの戦闘シーンでカッコいいぃぃぃ!ってなりました。
本郷猛とルリ子がアジトに向かうシーンで自立して後ろをついてくるシーンは先述の覚悟のススメの続編エグゾスカル零の意思を持つバイクモーントヴォルフや仮面ライダーBLACKのバトルホッパーみたいですね。
やはり今回の仮面ライダーは山口貴由作品と関連がありそうです。
これからのシン・シリーズ
シン・仮面ライダー 僕の周りの人の評価はあまり良くなかったようです。(参の人は高評価です)
僕個人は好きな映画ではありますがガールフレンドと一緒に観る映画ではないといった印象を持ちました。得てしてそういう映画が好きなんですけどね(彼女が大の仮面ライダーファンなら話は別ですよ)。
見るべきシーンはたくさんあった映画です。ただもっと吹っ切れてやっても良かったのかなと思う気持ちもありました。
観客や原作者なんかほったらかしにしてもっと好き勝手にやって良いと思います(充分ほったらかしだったとの意見もありますが)。どの映画監督にも同じことが言えますが自分が観たいものを撮って欲しい。
実写での映画の作り方ではアニメーションで時間と予算がかかった部分が削減されてシン・シリーズが早いペースで作られるのはすごく良いことだと思います。
それと同時に観る側も全力で応える準備が必要です。ファンと一緒にシン・シリーズを育てていけばもっと面白いことになると思いました。
まとめ
続編があれば仮面ライダー第3号はきっと…
-
前の記事
ぼっち・ざ・ろっくのこと 2023.04.01
-
次の記事
記事がありません