スラムダンクのこと

映画 THE FIRST SLAM DUNK観てきました。最高のアニメーションです。
年末は忙しくて観に行けず2022アワードに間に合いませんでしたが間違いなく上位入賞。遅ればせながら今回の映画や原作漫画の話。
THE FIRST SLAM DUNK
原作者 井上雅彦自ら監督。連載終了から30年。今でも読まれ続けている漫画なので若い人たちにも人気があります。
ジャンプ黄金期のヒット作の一つで当時の作品のリブートは珍しくありません。ただしバスケットボールを題材にした今作のアニメーション化の難しさは想像に難くない。
井上先生の納得のいく映像化には30年月日が必要だったといえるかもしれません。
舞台に選ばれたのはインターハイ二回戦、山王工業戦。原作でのクライマックス。今回の映画化で上手く機能しているのがPG(ポイントガード)宮城リョータの視点で描かれている点。
初見の人でもリョータの物語として完結し原作ファンには山王戦を別アングルの視点で見せる仕掛けになっています。
PGは攻撃の起点になるポジションで対局を俯瞰で見る司令塔。バスケットポールの試合とキャラクターのフィジカルをリアルに描く今作のコンセプトとリョータの心情を同時に描くことに成功しています。
オープニングのTHE BIRTHDAYのLOVE ROCKETSがスピンムーブでロケットのように敵陣に切り込んでいくリョータのテーマ曲のようです。
チームメイト三井とのファーストコンタクトも描かれ原作を補完しています。チャラいリョータの印象が変わり試合中に見せるクールな表情に意味を持たせています。
何れにせよ今回の映画化でリョータのキャラクターに心奪われました。
SLAM DUNK(原作)
原作の前半は喧嘩ばかりしているバットボーイ物の印象。吉田聡の影響もあったりして。
三井のバスケ部襲撃の回や今回の映画でリョータが屋上に呼び出されボコボコにされるバイオレンスな展開。
結構ふつうやで
冗談はさておき時代錯誤とも捉えられるおそれもありますが不良少年の美学は今もエンタメでもてはやされるテーマ。
ジャンプでは80年代 風魔の小次郎やジョジョの承太郎が本宮ひろ志のDNAを受け継いでいきます。SLAM DUNKも当時のバッドボーイの最新でもあったといえるでしょう。
それともう一つドカベンの影響が大きい。花道はバスケ版岩木。素人に本質に迫るセリフを言わせるところは同じく水島作品の一球さんにもイメージが重なります。
一方で花道は乱暴な男ではなく繊細な感性の持ち主であることが描かれます。バスケの試合でもそのクレバーな(ずるい)思考でピンチを切り抜けています。
安西先生が倒れた時に描かれる花道の過去。迅速な処置を施し何も語らぬまま去っていく男の背中が泣けます。
シュート合宿に付き合ってくれる桜木軍団もいい奴らですね。
本宮漫画の男の美学と野球漫画の金字塔 ドカベンへのリスペクトが当時のジャンプマナーと噛み合った最高傑作です。
SLAM DUNK2(妄想)
SLAM DUNKの続編が絶対ないのはファンであるならわかっているはず。ただし個人で勝手に妄想するのは自由。
湘北バスケ部のその後は作者自ら描いています。THE FIRST でも宮城と山王の沢北が海外(アメリカ)で活躍する姿で幕を閉じます。
原作のファンは僕も含めてずっと引っかかったままの事があります。それはインターハイ トーナメントBの愛知 名朋工業の森重寛なる選手。
花道を突き飛ばすほどの体躯。名朋の監督っぽい人があしたのジョーの丹下段平みたいで森重が当時の実在のボクサーをモデルにしているのがわかる。
この因縁の決着がついてない。花道の怪我は深刻で復帰は難しいかもしれないですがフル出場は無理だとしても戦わせてやりたい。秘密兵器だとおだてておけば大人しく言うことを聞くでしょう。
赤城と三井の抜けた穴は大きいですが宮城リョータ率いる新生湘北バスケ部も見てみたい。
水戸が親友のために入部なんて展開もありかも。彼もフィジカルが長けていてセンスがありそうなので木暮のスモールフォワード後任とか。
以外とあっさり花道は引退して他の分野で才能を発揮してるかもしれない。晴子との恋は実らず他の女性と結婚し子供をたくさんもうけて幸せに暮らしている。そんなのもありかなあ。
出番が全然なかった可哀想な愛知の星
好きなキャラクター
先程新生湘北メンバーに水戸を入れてはどうかと述べましたがまんざらでもないと思います。
桜木軍団はギャグメーカーですが花道のシュート合宿にも協力した影の功労者。
体育館で洋平がシュートするシーンがあります。意外と難しいものなんだなと独りごち。隠れた名シーンです。
花道の成長を応援する彼らにも青春があるはず。俺たちもこのままじゃなあなんて思ってたかもしれない。
インターハイ一回戦の豊玉高校 南も好きなキャラクターです。彼らのドラマも泣ける。
後任の監督とソリの合わないメンバー達。前監督北野との教えを守り頑なにプレースタイルを変えない南と岸本。
ラフプレーにも怯まない流川に何かが変わっていく南。現監督 金平の心情の吐露。
お前らのことが憎くてしょうがない
その後泣きながらも選手を鼓舞する姿に胸が痛くなります。予期せぬ北野との再会に覚醒する南達。山王戦に次ぐ名エピソードです。
試合後の流川とのやりとりも面白かった。
あとなんと言っても安西先生ですね。達観した名監督のイメージですがこの人も過去の呪縛に囚われた人です。
選手たちから厚い信頼とリスペクトを集めていますが花道との関係は特別。素人でイノセントな花道との触れ合いで安西先生自身も救われていきます。
山王戦のブザービーターはいかにも王道スポ根漫画の展開と言えますが(バスケの試合では以外とよくあること)何度も読者とキャラクターを絶望につき落とす展開(山王の戦術)に一度も諦めなかった安西先生とそれを信じ切った花道が勝ち目を呼んだのは間違いないのです。
プル プル プル
バガボンド
これでバガボンドの連載が再開すると思ったら大間違い。ライフワークにもなった作品。待とうではありませんか。
井上雅彦先生の描かれるフィジカルは美しい。今回の映画化でスポーツで良く言われる体幹や重心の移動が精密に描かれています。
バガボンドで描き続けてきた武道とメンタルがこの映画で昇華されていると思いました。
武蔵と小次郎はまだ出会いすら描かれていませんがこの二人の決着は早く読みたいと思うと同時に見たくない気持ちもあります。
悩める求道者武蔵に対して天真爛漫な天才小次郎の最後は見たくない。井上先生もそのことで悩んでるのかもしれない。
新たな環境に身を置いてリセットの意味もあったアニメ制作の経験がバガボンドにフィードバックされるのを待ちたいです。
まとめ
リョータカッコいい。

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