タランティーノの話

タランティーノ監督最新作の感想などの雑記。ネタバレがあるので注意。
ワンスアポンアタイムインハリウッド
映画を観る環境も変わってネットで気軽にいつでも観れる時代になりました。
この映画も家で加入している映画チャンネルで観ました。タランティーノ監督9作目の2019年公開の映画。
ちなみにタランティーノ監督 10本撮ったら引退するとおっしゃってるので新作はあと一作となります。
タランティーノ監督の映画は好きな作品も多くソフトもいくつかもっています。
デスプルーフが1番だったんですがこの作品を観て順位が変わりました。
最高傑作DEATH!
観る人によっては悪趣味でカルトな映画に思われそうですがレンタルビデオ世代にとっては最高の映画となりました。
レオナルド・デカプリオ
デカプリオそんなに好きな俳優じゃなかったのにこの映画で心を奪われました。
落ち目な俳優リック・ダルトンを演じています。ハリウッドが舞台の映画なので劇中でリックが出演した映画がいくつか描かれます。
戦争映画、犯罪アクション、マカロニウエスタン。過去の出演作品が回想で語られます(古いフィルム加工がされた映像)。
ザワークラウトを注文したのはどいつだ!
戦争映画で主演したときの決め台詞。このシーン結構重要。
本編と時間軸が同期した西部劇の撮影シーン(サム・ペキンパーぽいやつ)もあってこのシーンは素晴らしかった。
スランプだったリックが役者人生最高の演技をみせるシーン。(実際最高の演技)
達成感と安堵で涙ぐむリック・ダルトン。子役の女の子との触れ合いも心温まる良いシーンでした。
劇中劇は撮るの難しいと思うのですがこの映画の重要な仕掛けにもなっていて丁寧に作られています。事実このありもしない西部劇に引き込まれて監督の術中にまんまとハマってしまいました。
ブラッド・ピット
リックの専属スタントマン クリフ・ブース役。過去のトラブルで現場では煙たがられています。
クリフは最高の相棒。寡黙で粗野な男ですがリックから厚い信頼を受けています。(ちょっと雑に扱われたりもしますが)
偉そうなことを言うとこの映画のブラピの演技はベストアクトなのでは。台詞は少ないですが訳ありのスタントマンを好演しています。
ベンチシートのキャデラックにヒジをついて運転するシーンが絵になる。
ヒッピーに占領された西部劇映画村を訪ねるシーン。なにやら歓迎されてない雰囲気の中恩人に挨拶に向かうクリフ。
アロハシャツから伸びた鍛えられた腕。肘の皺が男の人生を物語っています。
この場面から不穏な空気が漂い始め事実とフィクションが重なっていきます。
クリフを案内するヒッピーの女はダコタ・ファニング。アメリカの安達祐実。大人になってました。
騒ぎを聞きつけたテックス(ヒッピーたちのリーダー格)が長回しで馬を走らせるシーンも圧巻。古き良き西部劇へのリスペクトも感じさせます。
シャロン・テート
タイトルからもわかるようにこの映画はお伽話です。とはいえタランティーノの映画。悪意と暴力がえがかれるのですが…
誤解が生じるのを承知で言うとこの映画ハッピーエンドです。
斜陽の西部劇映画。ヒッピーと東洋思想。落ち目の役者とスタントマン。それらを温かい目で撮ったタランティーノ監督の映画(スキャンダラスな舞台裏も含め)に対する愛情が感動を生むのです。(少なくとも自分は感動した)
リックとクリフの対照としてポランスキーとシャロン・テートが登場します。
胡散臭い名前の小男と(失礼)天真爛漫な新人女優。(リック邸の隣に引っ越してきます)
シャロン・テートはマーゴット・ロビーが演じています。シャロンが乗り回す911もカッコいいなあ。
未見の方に少しだけアドバイス。実在した女優シャロン・テートのことを少しだけ調べてから観ると良いと思います。ただし覚悟が必要となりますので注意。
むかしむかしハリウッドで
スティーブ・マックイーンやブルース・リーも登場するこの映画。もうこの世にいないスター達。(ブルース・リー役の方はよく似てた)
1960年代のハリウッドのリアルな描写と役者が役者を演じることでリックとクリフが生き生きと描かれました。(本編ヒロインのシャロン・テートも)
タランティーノ作品常連のカート・ラッセルやゾーイ・ベルもスタントマンの夫婦役で出てますね。
アル・パチーノもリックの身を案じるプロデューサー役で出てます。最初わからんかった。
リックのモデルがバート・レイノルズなのは後で知りました。ディカプリオ髭つけたら確かに似てる。
劇中流れる音楽も最高。ストーンズの”Out of Time”が突き刺さります。
Ounce Upon a Time In America
ベトナム戦争でアメリカの正義が揺らいできた時代背景。
“1969年以降そのスピリットは置いていません”
イーグルスも歌っています。
ワンスアポンアタイムインハリウッドはマニア向けの懐古趣味の映画ではありません。
カート・ラッセルのナレーションで語られる物語は悲劇でも喜劇でもなく”むかしむかし”のお話。
ヒッピーやブルース・リーはカウンターカルチャーの象徴ですがちょっとおっちょこちょいに描かれます。
タランティーノの映画では暴力がテーマとして扱われますが善悪の定義は曖昧でその行為と結果が描かれるだけです。
ヒッピーたちの末路はああなって当然。ちょっとしたすれ違いで未来は変わっていきます。
ゴアな暴力シーン。前作の”ヘイトフル・エイト”ではロクなことにならなかったラスト。今作では主人公とその相棒が事実をほんのちょっとだけ捻じ曲げて映画としても最高の着陸をしてみせるのです。
この映画をハッピーな気分で観終わることができたのはシャロン・テートをチャーミングに演じたマーゴット・ロビーにあると思いました。
とにかく最高の映画です。
まとめ
クリフの愛犬ブランディも名演です。