戦闘妖精雪風の話

戦闘妖精雪風の話

死ぬまで付き合えるコンテンツがあるとするなら、
僕はこれです。小説、アニメ両方好きですね。

表紙

現在、出版されてる装丁。横山宏先生の表紙のやつは古本屋でたまに見かけます。

最新刊、アンブロークンアロー。カッコイイ!

ストーリー

人類と異星体ジャムの戦い。
舞台はフェアリー星と呼ばれる惑星。
雪風は主人公深井零の搭乗する戦闘機のパーソナルネーム。人工知能。

読む前は架空戦記もののイメージがあったのですが、SFです。
異種間とのコンタクト、AIと人間の交流をテーマに描かれていきます。

作者は神林長平先生。雪風はライフワークですね。
戦闘機の造詣も深く、メカの描写も丁寧に描かれていきます。

雪風

1番の魅力は雪風です。戦闘機に搭載された人工知能なのですが、モニターに文章で搭乗者に自分の意思を伝えることが出来ます。

AIに感情があるのか?

多くの作品でとりあげてこられたテーマですが、日本人は好きですよね。

「HAL9000」「鉄腕アトム」「ジャイアントロボ」「ガンダムセンチネルのALICE」
どれも献身的なラストが印象的です。(HAL9000は、ちょっと違うか?)

AIの献身的にみえる行為は人間とは違います

雪風は一度撃墜されたとき、自身のデータをすべて最新鋭機メイヴ に転送し、負傷した深井少尉を文字通りイジェクトし、スーパーシルフを破壊します。

外界とのインターフェースに執着する人間と違い、
AIは自身のインターフェースに固執しない

AIの献身的にみえる行為は選択肢のひとつで、最終的な決定権が自分たちにあると思い込んでいる人間のエゴがそう思わせる

アトムは、人類のために太陽に飛び込んでいったけど、雪風は不要となったパイロットを躊躇なく排除します。

この2つの行為に差はなく、パーソナリティが希薄なAIの選択肢に、脆弱な人間は勝手に悲しんだり怯えたりします。

雪風も人命第一のプログラムからの判断かもしれないですが、本懐はジャムの殲滅にあり、排除された深井少尉は生還するものの半病人のようになってしまいます。

悪気はなかった。ただ人間弱すぎ。

人工知能に人間的な感情があると考えるのはロマンチックな妄想で、彼らの見えている世界は合理的かつ個の境界が曖昧な、もしくは境界のない整然としたグリッドで、不安定な人間はランダムな要素でしかないようです。

JAM IS HERE

ランダムな要素である人間を排除するAIに対し、理解し近づこうとするのがジャムです。
正体不明で戦闘機のような飛翔体として現れ、人類を脅かします。

インターフェースは持たず、意思疎通は不可能。
破壊工作員として人間のコピーをフェアリー基地内に潜入させています。

タンパク質を生成することが出来ず、
おそらくケイ素由来の生命体(精神体)と思われます。

幽閉された深井少尉にだされる “うまいめし” は、
コパイロットのバーガディッシュ少尉です。

ジャムと雪風は敵対関係にありますが、相似として描かれます。
ジャムはAI的であり、目的も侵略や殲滅ではなく、人類の観察、研究にあります。

人間が理解できないジャムと雪風
ジャムと雪風が理解できない人間
この三すくみが物語の主軸となります。

ジャムやAIの冷徹な行為に怯える人間ですが、
深井少尉を排除する刹那、雪風は、こう伝えます。

GOOD LUCK

航空機間の通信で交わされる互いの安全祈願の挨拶です。
つたない言葉で意思疎通を図ろうとする雪風は、
凶暴だけど美しく愛おしい。

エゴの都合のいい解釈ではなく、
言いたくないけど、やっぱり愛?

先述の人間のコピーはジャミーズと呼ばれ、
悲しい存在として描かれます。

生前?の記憶は継続していますが、
ジャムによって再構築された人間もどきです。

トマホークジョンの話は切ない。
アニメ版の声優、矢尾一樹さんもいいお芝居でした。

ちなみに、主人公の深井零の声優さんは、
俳優の堺雅人さんです。こちらも素晴らしいお芝居でした。

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アニメーションの雪風

まずキャラクターデザインが素晴らしい

多田由美先生が担当されています。

色気と影のある人物を魅力的に描いています。
特に深井少尉の上官ブッカー少佐とジャーナリストのリン・ジャクスンがいい。

メカデザインは、山下いくとさんが担当されています。

小説の表紙のスーパーシルフやメイヴ、挿絵の横山宏先生のも好きなんだけど、アニメーションに映えるデザインをされていると思います。

アニメの雪風はいい動きをします。
180度回転して巡航ミサイルをガトリングガンで撃つシーンは、最高

LADY GUNのカット割りもカッコいいし、
ミサイルが爆発するときのレコードのスクラッチみたいな音もいい演出だと思う。

4巻の空母からの発艦シーンもかっこいいです。
このシーン小説にもあったっけ?

着艦の時、強力なレーダーで空母のモニターが真っ白になる描写は、あったけど、
副読本や多田由美先生の漫画、FAF航空戦記なるマニアライクなDVDも出ています。

FAF航空戦記

ミリタリーの観点で雪風を考察してます。

雪風の戦術や劇中の細かい描写を解説してるのが、
軍事評論家の岡部いさく先生。

テレビでは有事の時にでてきて真面目に解説されていますが、嬉々としてお話しされる姿は微笑ましい。

解説にもあるんだけど、ジェリーアンダーソン作品の影響を示唆する発言をされてて、興味深かった。
ジャムは、ミステロンだし、空中空母もね。

すごい余談なんだけど、プライマルスクリームのボビーギレスビーがプライマル以前にやってたバンドが、ミステロンアンドキャプテンスカーレットなんだって。

RTB

OPテーマ、BGMは三柴理さん 塩野道玄さんという方がやられてます。
筋肉少女帯の人。

リン・ジャクスンが取材のため南極に訪れる時に流れる曲がすごい。
レッドツェッペリンのカシミールみたいな、
リフレインの間にピアノの美しいしらべがはいります。

不安をかきたてる重厚な雰囲気とピアノの透明感のある旋律が物語のスタートにあっています。

この頃のGONZOのアニメは、音楽が凝ってますね。
青の6号のスリルの曲も良かった。

アニメの1話のラストでかかる主題歌は名曲

メイヴがスーパーシルフを蜂の巣にするシーンで被弾する音が連続し、くいぎみでジャーンって始まるんだけど、カタルシスが半端じゃないよ。

小説の名シーンを尊重し、映像作品ならではの演出だと思います。

BGMの重厚な雰囲気とうってかわり、牧歌的な曲調で映像とのギャップもあってか、心をかきむしられる切なさがあります。

歌われてるのは、今は亡きムッシュかまやつさん。
タイトルはRTBでこれは航空用語ですね。

リターン トゥ ベース

これから帰投するの意。
ここでは、家に帰ろうくらいの意訳がしっくりくるかな。

戦闘妖精雪風は、未だに続編が執筆されています。
もうずっとフェアリー星の空で飛び続けていたい。

まとめ

ブッカー少佐の声は、ギロロ伍長の人。