鉄コン筋クリートの話

“もちもーーち、こちら地球星日本国シロ隊員。応答どーじょー。“
鉄コン筋クリートに登場するシロが交信するときの決まり文句。
今日は松本大洋先生の漫画、「鉄コン筋クリート」の話をします。
松本大洋
まずは作者の話から。
僕こと壱ノ盆が松本大洋の作品と出会ったのは本屋さんでたまたま見かけた「ピンポン」という漫画をジャケ買い(表紙買い?)したのがキッカケです。
窪塚洋介さんが主演で実写映画化されたので知っている人も多いと思うのですが、当時は映画化される何年も前。
松本大洋という漫画家を全く知らなかった自分は、「ピンポン」というタイトルとその独特な画風に、完全に稲中卓球部的なギャグ漫画だと思って買いました。
※稲中卓球部について詳しくはここで。1990年代の伝説的なギャグ漫画です。
しかし、読み進めるとギャグ漫画とは全く違う熱いスポ根漫画。
卓球というお世辞にも当時はメジャースポーツとは言い難い題材での熱いストーリーに心を奪われて以来、松本大洋作品の大ファンになりました。
絵本の様な絵柄なのに、努力と才能という現実的な世界が舞台の熱い青春漫画。
松本大洋先生の作風は絵本作家の母親(だった筈)の影響とも言われていますね。
ピンポンについて語っている記事はこちら。
ここからは鉄コン筋クリートの話。
漫画の話
漫画って見出しつけてるのでアニメ版もあります。まずは漫画の話。
全3巻で構成されたこの漫画。松本大洋先生の漫画短い漫画が多いですね。短編集なんかもあるし、集めやすいです。

タイトル
鉄筋コンクリートではなく鉄コン筋クリート。そこんとこヨロシク!(ピンポンのペコ風)
もうこの時点で遊び心満載ですよね。言葉遊び。永遠に子供な男という生物は、わざと間違えた単語を使ったりするんです。
歌手のゆずも横浜アリーナのことをヨコアリハマーナとか言っていたり、いつまでたっても男はこんなくだならない事が大好きです。
正直なところ題名が作品の中身とは直結していないんですが、ピンポンよりもおとぎ話のような世界感が強いこの作品にはやたらとマッチしたタイトルです。
奥田民生さんも歌詞の中で言っていましたよ。
“マシュマロは関係ない、本文と関係ない“って。
要は関係なくても印象的だったり、なんとなくその作品に合った響きっていうところが良いんですね。
舞台
宝町という昭和の懐かしい感じが漂う町です。
古びたストリップ小屋があるような町が、高度成長期みたいな流れに飲み込まれていくところでストーリーが進みます。
日本なんですけど、日本と香港が混ざった様な町並みに見えます。
(実際に香港の町に行った事ないけどね!)
登場人物
登場人物が素晴らしい。これも松本大洋作品の特徴だと思うんですが、実名よりもあだ名(呼び名)で呼ばれている登場人物が多いです。実名がないキャラも多いんですが、やたら響きがマッチしています。
ネコ
主人公の二人の通称。それぞれはクロとシロと呼ばれている第一級ぐ犯罪少年。
漫画の表紙は1巻がクロで2巻がシロ、そして3巻が二人。
宝町に住み着く親兄弟を持たずに暴力を生活の糧として生きるこの二人の少年を軸に物語が進行していきます。
二人の特徴として、空を飛べるんですよ。もうこの時点でおとぎ話なんですが、実際にはあんまり飛ぶシーンはなくて、むしろ読んでてそこ飛べよ!って言いたくなるところが結構あります。
でもめっちゃ飛んで超人パワーみたいな場面を書かれたらなんだか人間っぽさが無くなっちゃうんですけど、このあんまり飛ばないところが普通の少年にも見えちゃうという絶妙なバランス。
頭脳と暴力性を持った大人の様な性格のクロと、ザ・少年の幼稚な部分を凝縮したような性格のシロ。
この二人のそれまでの生活は一切書かれていないので謎なんですが、多分兄弟ではないと思っています。上にも書きましたが親兄弟を持たないって藤村も言っているし。
二人とも飛べてお兄ちゃんっぽいクロと弟っぽいシロですが、アニメ版だけクロの回想シーンでシロとの出会いっぽい場面が少しだけ流れます。
藤村
宝町の警官。
警官なのでネコたちを取締る側の人間なんですが、親のように心配する描写も多い人情味に溢れた古風なイメージのおじさん警官です。(全然捕まえない)
後述するヤクザのネズミの事も心配する優しいおじさん。このネズミとは過去に色々あったっぽくて、一度は追い出している因縁の仲。(全然捕まえない)
要約すると、ストリップ小屋で赤面する純情な宝町大好きおじさん。
沢田
藤村の部下の警官。
「俺東大出てるんすけど、国家公務員上級試験けって現場に回してもらったんすよっ」
「俺不感症でオーガズムに達しないんすよっ」
「あー撃ちてーピストルー」
等の痛々しい発言を序盤に発しまくる痛い奴かと思ったら、どんどん良い奴になっていきます。
ネズミ
本名は鈴木。
大精進会という暴力団の幹部?的な占い好きのヤクザ。
宝町が都市化していくことを反対する、宝町で悪いことも大人なことも全て学んだと語る宝町大好きおじさん2。
人情味がある様な一面も見せつつ、当然悪い人間なんで宝町に戻ってすぐ町のチンピラに薬を売らせて儲けようとしていたりもします。
ネコとネズミ、(どっちかというとクロとネズミ)ここも過去に色々とあったっぽいですが特に書かれてはいません。
木村
ネズミの舎弟。
ネズミを親のように慕い、悪いことは全てネズミに教わったと語る男。(でもちょっと謹慎させられたらすぐイジける)
暴力大好きといった感じのヤクザで、登場初期は冷静沈着な感じに見えますが、すぐカッとなっちゃう人。
じっちゃ
謎のホームレス。
クロとシロにじっちゃと言われて慕われている以外全く謎の人物で、クロとシロを小さい頃から知っているっぽくて、世話してあげてたっぽい人。
クロとシロの本質を見抜き、宝町の流れも見抜く仙人のような人。
謎の殺し屋(三人)
そのまま、謎の殺し屋(三人)。
こちらは装備している戦闘用スーツの性能っぽいですが、こいつらも飛ぶ。
謎の言葉を喋り超人的な強さなのでサイボーグ?って思いましたが、普通に血が流れるので違うのかな。
もしくは人造人間的な、とにかく飛ぶしコンクリ破壊したり子供相手にも容赦のないヤベー奴ら。
こいつらがネコを襲うのですが、アニメ版ではクロとの戦いで雇い主が建設したテーマパークを破壊しまくるので、それは無いでしょって思いました。
裸にジャケット前髪くるり男
謎の外国人。
特徴は裸にジャケット着て前髪がくるりってなっていてピアス付けまくりの変態的な格好。眉毛もくるりってなっている。
大精進会と手を組んで、宝町を都市化しようとする組織の人間。
上記の殺し屋を雇ってネコを襲うように指示をする奴で、他の町でも都市化の邪魔になる奴は子供でも消そうとした奴。
変態的な格好しているくせに変な顔って言われたら、冷静な感じを出しながら内心は顔を真っ赤にしてブチ切れているっぽい器の小さい奴です。
イタチ
頭が牛で体が人間という、最強の餓鬼。
伝説的に語り継がれている、実際に存在するのか、誰かが作り上げた空想の生物なのか、その素性が一切謎の奴。
多分、鉄コン筋クリートマニアはイタチの存在が何なのか、独自の説を早口で語ってそう。
以上、他にもいっぱい登場人物がいますが、主要なところではこんなところかと。
全三巻なのに登場人物多くて、その人物が全員印象的なキャラなのが凄い。
そして書きながら思いましたが謎な奴多いですね。

アニメ版
この作品はアニメ版(映画)が素晴らしいんです。
時系列は少し変えていますが、全三巻なのでボリュームがちょうどいいのか、一作に良い感じに全てを入れてくれています。
そして松本大洋先生の独特の世界観、登場人物や町並みを綺麗な映像で見事に再現していると思います。

何より良いのは声優人。
漫画のファンって脳内でキャラの声のイメージが勝手に作られたりしているので、映像化されると、そんな声じゃないでしょって突っ込みたくなることも多いのですが、鉄コン筋クリートは皆ピッタリなんです。
特に主役のクロとシロの声優は嵐の二宮和也さん(クロ)と、蒼井優さん(シロ)なのですが、どハマりしています。シロの声最高。
本職の声優を使わないのって賛否両論ありますが、自分は合っていればどっちでもいいと思います。
トイストーリーでも一悶着ありましたが、唐沢寿明のウッディが最高過ぎるから誰も文句が言えないし、山ちゃんだったらって言っている人を見たことがない。
山寺宏一さんは声優界一と言われるほど凄い方ですが、結局は上手でハマっちゃってたら仕方ないです。
山ちゃん以外のエディーマーフィーも考えられないですしね。
僕の世代は、エディマーフィーは下條アトムさん。洋画の吹き替えは、俳優さんがよくやってて声優さんとの差別化が曖昧でしたね。
話が逸れましたが、鉄コン筋クリートのアニメは素晴らしいですよ。
写真が海外版なのは、当時はなぜかブルーレイ版が日本で売ってなかったんですよね。
綺麗な映像はより良い映像環境で見たいじゃないですか。なので船便で取り寄せました。
今は売っているのかな?
今は売ってた。
シロの名言
冒頭でもシロのセリフを書きましたが、シロのセリフが可愛くて、なのに芯を付くようなセリフも多くて、この漫画のキーはシロなんですよ。その中でも一番好きなフレーズがあるので勝手に紹介します。
デブっちょ、やせっぽち、ノッポ、チビ助。こわい人、やさしい人、いろいろ。ちっぱい(失敗)してんの。神さまいっぱい。シロつくるときは、神さまでかくつくり過ぎたカバの口みて反省してたのきっと。だからシロいっぱいネジ無いの。心のネジ。それでクロね、クロもね。いっぱいネジ無いの。心のネジ。でもクロの無い所のネジシロが持ってた。シロがみんな持ってた。
鉄コン筋クリート第3巻より引用
良いセリフじゃないですか?こんなセリフを考えつく松本大洋先生はやっぱり凄いです。
こういう詩的なセリフが他の作品にもいっぱい見られます。
鉄コン筋クリートをまだ見たことない人や、松本大洋作品をまだ見たことない人は、漫画でもアニメでも良いので一度見てもらえれば独特の世界観が伝わると思います。
他の作品でお勧めなのは、スポ根なら「ピンポン」、ファンタジーなら「ナンバーファイブ 吾」、泣けるのは「Sunny」です。
まとめ
アニメ版の冒頭、じっちゃの声は音量80ぐらいにしないと聞き取れない。
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