四畳半神話大系のはなし

四畳半タイムマシーンブルース観てきました。森見登美彦作品は最近映像化されたものや原作を遡って漁っています。
ノイタミナ枠のテレビシリーズも久しく今回の映像化のタイミングはちょっと?だったんですがはたして…
森見登美彦
犬王のはなしですこし触れたアニメ”夜は短かし恋せよ乙女”。京都先斗町を舞台にしたファンタジー。湯浅政明監督のアニメ(の地上波)を観ましてファンになったニワカもええとこの私。
森見作品はベストセラーも多く書店の平積みでよく見かけていたんですがこの歳になるまでガン無視。
この度森見登美彦作品を語るにあたり自部屋を調査したところ同作者の”ペンギンハイウェイ”のハードカバーを発見。
おそらくジャケ買いし数ページ読んだあと地殻変動にあいロスト。今の今まですっかり忘れていた。
これを買った当時は森見登美彦先生を認識しておらず我ながら失礼にもほどがある。(ジャケ買いあるある?)
ただこの作品も四畳半神話体系との関連がありそうなので楽しみが先送りになっていたのだと納得することにしました。
四畳半神話大系
傑作です。まずタイトルが良い。二畳でも三畳でもなく四畳半こそ究極。半畳ってのがいい。中心に配せばゴールデンハーベストのマークみたいでカッコいい。
“神話大系”としてのマクロな視点から四畳半へとフォーカスするようなタイトル。四畳半が正方形に配置できるのも重要。(二畳でも正方形に配置できるのですが…)
森見作品をいくつか読んでみてラファティ(R・Aラファティ アメリカのSF作家)の影響を感じました。時間の可視化やループする世界線を”法螺話”として描くスタイルは読み手を選びますが世界観にエントリーできさえすれば幸せな体験ができます。(個人の意見デス)
物語は独立した4編から構成され全ての物語は主人公”私”の悶々とした学園生活をラブレー的にアカデミックな語りで始まります。
ここからネタバレがあるので注意
主人公”私”の大学入学時に選んだサークルで分岐する世界線が各話にあてられます。ここで面白いのはどのサークルを選んでも結果が変わらないこと。
それは主人公の恋が実ることと悪友”小津”が足の骨を折るところ。
3つのルートはそれぞれを補完してるのがわかります。
4話目はすべてのルートを回収するための仕掛けで蛾の群れの正体がわかります。どの話もラストが鴨川デルタで世界線が合流するのはようできとるなあ。
小津はいいキャラクターですね。主人公をもて遊ぶ悪友ですが無自覚なキューピットでもあります。
四畳半タイムマシーンブルース
この度の映像化も無限にある世界線の一つと考えていいでしょう。上田誠の舞台劇”サマータイムマシーンブルース”とのコラボレーション。
サマータイムマシーンブルースは2005年にも映画化されています。上田誠はヨーロッパ企画の座長。アニメ版は夏目真吾監督。
狭い小劇場で演るのにタイムループの設定は相性が良さそうです。基本的に昨日と今日を行ったり来たりなのでセットも一つで十分。
四畳半シリーズのお馴染みのメンバーが総出演。主人公の悪友小津をはじめ樋口先輩や明石さん、個人的には羽貫さんが推し。
先述の”ペンギンハイウェイ”の歯科衛生士さんとは関係あるのでしょうか?兎に角グラマーで天真爛漫な歯科衛生士って他に何かいりますか?話を戻します。
四畳半シリーズでのキャンパスライフは今から20年以上前の風俗やアナログで貧乏な学生の生活が描かれています。
自分も上阪して何年か暮らしたことがあるので京都の風情や当時の貧乏暮しの経験からこの作品にシンパシーやノスタルジーを感じます。
若い世代の目には完全にファンタジーとして写るのでしょうが古都京都をロケーションに選んだのは偉い。
1000年後も鴨川デルタは絶対残ってる。なので未来でもあるし過去でもある物語。
今回の公開時期も最初正直今さら感がありました。(読んでもなかったくせに)
それは撤回させていただきます。その理由を次の項で述べたいと思う。
出町柳パラレルユニバース
タイムマシーンで過去にいく理由は人それぞれですが概ね多くの人はノスタルジーに耽るためではないでしょうか?
タイムマシーンブルースの登場人物たちはしょーもないことに無駄遣い。それに伴い増え続ける並行世界の収束に右往左往どころか過去現在を行ったり来たりの主人公”私”。
これは僕の邪推ですがまず”四畳半タイムマシーンブルース”が四畳半シリーズのファンへのプレゼントであったと思います。
四畳半シリーズでは並行世界の存在は神である読者のみ知るところであったのに対してタイムマシーンによる指向性により自発的に多元宇宙へのアクセスが可能になっているのもこの作品の特殊なところ。
コラボとあるのでかなりスペシャルなことだしヨーロッパ企画のファンの方々への感謝の念もあるのかなあ。
今回良かったのは所謂あの四畳半シリーズとして作られていることでつまり
中村佑介のキャラクターデザイン
上田誠原案のストーリー
そしてアジアンカンフージェネレーション
この三つの組み合わせは”猫ラーメン”の秘伝スープの出汁のように絶妙かつ完璧。
(個人的にもう一つあげるならば明石さんの声優が坂本真綾さんだったことを小さく載せていただく)
アジカンはこの度あらたに挿入歌
“出町柳パラレルユニバース”を録られています。
インタビューを読む限りかれらもこの作品との運命を感じていて偉そうなことを言わせてもらえば良い仕事をしているんですね。
MVではメンバーが四畳半のキャラクターに扮し嬉々としてやってるのが伝わってくる思いがしました。
ボーカルの後藤さんがノーメイクで主人公”私”をやってるのが愉快。(因みに自分の友人にも”私”そっくりのやつがいます)
先述の今さら感云々の撤回ですが不変のロケーションとアジカンのブレてないパワーポップが原動力となっていてタイムマシーンを駆動させているといったらロマンチックにすぎるでしょうか?
四畳半シリーズを最初から追いかけている人は当時10代だとしても今は妙齢とは言いがたい年齢をまたぐかまたがないか。
そんな彼らを過去に誘うタイムマシーンそのものが今作であったと思ったり思わんかったり。
ニワカのおっさんもタイムマシーンに同乗させてもらえないかなあ。
まとめ
成就した恋ほど語るに値しないものはない。
四畳半神話大系 本文より
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