アニメと飛行のはなし

アニメと飛行のはなし

竜とそばかすの姫 観ましたか?

ベルがクジラに乗って歌うシーン。重力から解放され電脳空間を飛び交うキャラクターたちは美しい。

細田作品のOZやUの電脳世界は発明。アイデア自体は古くからありサイバーパンク小説やアニメではビデオ戦士レザリオンなんかが先駆け。

電脳空間はグリッド状の地平が描かれることによって上下が表現されて浮遊感が生まれます。

飛行するイメージはアニメーションでは黎明期から繰り返し描かれるテーマのひとつ。

日本のアニメと飛行する少女の系譜についての雑記。

金田伊功

アニメ好きなら必ず知ってる伝説のアニメーター。”かなだよしのり”とお読みします。

80年代のアニメではスタッフロールでよくお見かけしますが上級者になるとカット見ただけでわかるようになります。

銀河旋風ブライガーのOPが好きでOPとルーチンで毎回でるブライガーの変形シーン目当てで毎週観てました。

金田パースと呼ばれる極端に遠近感を強調した構図。動画枚数に制限のある日本のアニメーションに画力と工夫で新しい表現が確立しました。

BIRTH

プリケツの女の子と反重力が堪能できるアニメ。おぼえてますか?

金田伊功が雑誌で連載していた漫画を映像化したOVAのハシリ。模型屋でヘビロテで流されてました。

見どころはヒロイン、ユピテルの飛行シーン。てゆうかそれしかおぼえてない。

反重力バイク的なメカで砂漠を疾走するシーンは国宝です。

ディズニーでも飛行シーンはよくあるけど高度が高かったりカメラ固定のツケパンだったりでスリルやスピード感があまり感じられない。

BIRTHではカメラも動いて地上スレスレの飛行がカッコいい。作画のストレスを減らすため舞台を砂漠に、ヒロインはピタッリコスチュームの美少女。

キャラクターデザインも金田さんでアニメーターの作画がデザインに影響を与えることも当時はよくありました。

ナウシカ

ジブリ作品も飛行シーンがよくでてきます。

“カリオストロの城”でルパンがクラリスの幽閉された塔に飛び移るシーン。

時間をかけて天守閣?のてっぺんまで登らせて急降下。演出の緩急でスピードとスリルが強調されます。

ところでルパンが二歩目で足を着く塔。どっから現れた?あのタイミングだと天守閣とクラリスのいる塔の中間にあるはずなんだけど?

ナウシカには魅力的な飛行メカが沢山登場します。なかでもナウシカ駆るメーヴェが飛行少女を語るうえでも重要。 

全翼のグライダーのようなデザイン。セラミック製で超軽量。寝そべるような姿勢で搭乗。

キャラクターのフィジカルが露出してるところがポイントです。

小型の飛行機や背中に背負うような飛行装置もアイデアとしてあったと思います。

メーヴェのスポーティなイメージと普段使いの機械としての役割が両立したアイデアが素晴らしい。

ナウシカのプロトタイプともいえる小山田マキも飛行少女の系譜の一人でしょう。

“さらば愛しきルパンよ”に登場する少女。

ロボット兵ラムダも登場します。リアルタイムでこの最終回を観たときは世界が変わりました。

新宿での市街戦。74式の描き込みが凄すぎDEATH!。戦車はナウシカでもトルメキアの自走砲でやってます。悪役一号のフルアニメーションみたいなあ。

月面兎兵器ミーナ

ダイコンフィルムもアニメ好きの間では語り草。SF大会で流されたショートフィルム。

庵野監督をはじめ売れっ子アニメーターがアニメ誌などで紹介されファンの目も肥えてきた頃。

“うる星やつら”なんかで実験的な回があって面白い。メガネがパワードスーツで大暴れする回もう一回観たい。人狼のオリジナルですね。

ダイコンのオマージュはドラマ”電車男”のOPで飛行少女のイメージは到達点に達します。劇中の架空のアニメのOPとして(後にスピンオフ)GONZOが製作。

多段式のミサイルポッドは80年代的でマクロスやイデオン、板野一郎氏へのリスペクトです。

CGも効果的に使われてカメラワークもカッコよかった。秋葉原を飛ぶ電車もSF的だしなによりうさ耳のヒロインがオタくさいんだけどこれしかないってデザイン。

主題歌 ELOのトワイライトもドンピシャ。

MVとしても優れていると思います。 

エヴァンゲリオン

エヴァはロボットものですがコクピット内の描写は飛行少女の系譜としての側面があります。

コクピット内の描写で革新的だったのは360度モニター。富野作品の”重戦機エルガイム”に登場するマーク2で採用されたシステム。

堅牢なコクピット内の壁面すべてがモニターになっていて搭乗者が座るシートがあたかも空中に浮かぶようなイメージになります。

これ後方のモニター全く意味ないんですよね。ただ演出や作画の省エネという意味では大発明。

富野作品の後のシリーズではほぼこのシステムで他のロボットものでも効果的に使われました。

エヴァンゲリオンもエントリープラグ内は空中を浮かんでいるかのような描写になり演出の面で重要になっています。

シン・エヴァのマリオネットの様に吊るされた8号機はスパイダーマンのウェブスイングのイメージも取り入れて面白い効果がでています。

ハイジのOPのブランコのオマージュもあるかもしれないですね。

飛行する少女たち

日本のアニメで乱発するこのイメージの起源はなんなんでしょうか?

メカアクションのあるロボットものはおおよそフロイト的なエロスとタナトスで説明がつきます。

西洋絵画の影響もあるのかなあ?ドラクロワの絵やジャンヌダルクの伝説で民衆を導く女神のイメージは自由への渇望として描かれています。(飛んでないけど)

女神のイメージとスピード感のある作画技術で飛行する少女の系譜は始まったのかもしれない。

ゴツゴツした立体より紡錘型の連続した人体(特に女性)を飛ばすほうがアニメーションには向いているのでしょう。なので空飛ぶ少女達は露出度が高いかもしくはピッタリスーツなのです。(ナウシカはハヤオ的にはギリ)

冒頭で触れた”竜とそばかすの姫”に登場するベルはバーチャル世界のディーバ。クジラに乗って歌うシーンはマクロスを思い出した。

ミンメイもナウシカもエヴァのマリも物語を終焉に導く女神。大袈裟に言えばそんな感じかも。

まとめ

ただ昔も今も僕たちは空飛ぶ女の子に夢中なのは間違いないでしょう。